米国政府は制裁措置や輸出管理規則を回避する者の捜査と訴追に改めて重点を置くようになっており、企業はコンプライアンス・プログラムを見直さなければ、深刻な結果を招く危険があります。

米司法省は2023年3月の基調演説で、国家安全保障局(NSD: National Security Division)に25人以上の検察官を増員し、企業の取締りを担当する主任弁護士を初めて採用するなど、取締部門の権限と能力の強化に多額の投資を行うことを発表しました。

こうした2023年の規制強化を受けて、企業に制裁およびコンプライアンスリスクのデータを提供するKharon社のシニア・バイスプレジデントで米国財務省元職員のJoshua Shrager氏は、「コンプライアンス担当職員は、常に変化する規制環境に合わせてコンプライアンスの枠組みを進化させ続ける必要があります」と話します。

またShrager氏は、「米財務省の金融犯罪捜査網(FinCEN)と米商務省の産業安全保障局(BIS)による最近の共同アラートは、制裁と輸出規制に対してダイナミックで情報に基づいたアプローチが必要であることを浮き彫りにしています」と述べ、「企業はリスクを軽減し、コンプライアンス違反の影響を回避するために、こうした複雑な状況をうまく乗り切る必要があります」と説明します。

はっきりしているのは、通関に対する従来の全く異なるアプローチが、ますます不十分になってきているということです。実際に厳しい罰則が科されたり損失を被る可能性を考えると、制裁や規制変化に直面するグローバルフォワーダーは、どのように積極的にコンプライアンスを遵守し続けることができるのでしょうか。

米国の規制ガバナンスを理解する: OFACとBISとはどのような組織なのでしょうか?

米財務省の外国資産管理局(OFAC: Office of Foreign Assets Control)と米商務省の産業安全保障局(BIS: Bureau of Industry and Security)は経済制裁と輸出規制の取締りにおいて極めて重要な役割を果たしています。

OFACは米国の外交政策に基づき、米国の国家安全保障または経済に脅威を与える個人または地域に対する貿易制裁を実施および執行する責任を有しています。

2018年から2023年7月までの間に、同局は制裁違反への対応として94件の企業強制措置を発動しました。また2023年だけを見ても、こうした強制措置の結果、6180万米ドルという多額の罰金が科されました。

OFACと連携して、BISはデュアルユース品目と特定軍需品目の輸出規制を監督・執行しており、その対応策には、違反の厳格な捜査、違法輸出の阻止、最終用途の検証、そして輸出管理規制に違反する者への積極的な追及が含まれます。

制裁にはさまざまな形態があり、特定の外交政策目標に合わせて調整されます。幅広い制限を網羅する包括的なものから、特定の資産や貿易活動に焦点を当てた選択的なものまであります。

このような多様な貿易環境においては、複雑な国際貿易を行う企業にとって万能な解決策は存在しないため、きめ細かで適応性のあるコンプライアンス戦略が不可欠です。周到な準備と対応力は単なる選択肢ではなく、必須事項なのです。

フレイト・フォワーダーの現在のコンプライアンス義務

今日、コンプライアンスには複数の極めて重要な義務が含まれています。

仕入書、梱包明細書、原産国、船荷証券を正確に記載し、商品の課税価格が正しく申告されるなど、必要書類を適切に準備する必要があります。

多くの場合、税関当局は輸入者と輸出者に対して指定された期間、帳簿書類を保存することを義務付けているため、顧客にそのサポートをするのもフレイト・フォワーダーの責任です。

貨物によっては輸出入許可証が義務付けられており、フレイト・フォワーダーは顧客が必要な許可証を所持していることを確認すると同時に、規制品目や禁止品目の輸送を避けなければなりません。

また、コンプライアンスには地域および国際貿易協定の遵守、すべての関税と税金の適時の支払い、および税関検査時の全面的な協力も含まれます。正確な税関申告と迅速な関税納付は、商品の納期遅延と罰則を防ぐのに極めて重要です。

コンプライアンス違反の大きなリスク

SDNリスト(米国の安全保障を脅かす者としてOFACが規制対象に指定した企業、組織、個人のリスト)で指定されている者や事業体に関わる規制へのコンプライアンス違反は、企業にとって深刻な結果をもたらします。これらの影響は、船舶がブラックリストに載せられることや、商品の差し押さえ、または罰金といった直接的な問題にとどまりません。

コンプライアンス違反は制裁措置の引き金となり、サプライチェーンを混乱させ、遅延や顧客不満を引き起こし、さらには契約を失う危険性があります。また、規制当局が重要なライセンスや認証を取り消す可能性さえあります。

さらに深刻なことに、企業の評判を下げることになりかねず、顧客や取引先との信頼関係を損ない、契約更新や新規契約の妨げとなります。そして最悪の場合、市場から締め出される可能性もあります。

今日のグローバル環境における政府制裁の重要性を考えると、コンプライアンスを自動化するテクノロジーへの投資は、国境を越えた安全で効率的な商品の移動に不可欠です。コンプライアンスは単なるオプションではありません。長期的な成功と持続可能性に欠くことのできないものなのです。

フォワーダーはどうしたら積極的なリスク管理体制を整えることができるのでしょうか?

無数の結果が危惧される中、必要なリスクベースのアプローチを優先する制裁コンプライアンス・プログラム(SCP)の確立は困難な作業に思えるかもしれません。

しかし、包括的なコンプライアンス戦略を完成させるには、定期的な監査を実施することから始めることができます。これらの監査は、既存プロセスの効率性の評価、組織内の潜在的な違反や体系的な不備の特定、OFACが定める急速に進化するガイドラインとの継続的な整合性の確保など、複数の重要な目的を果たします。

監査はデータ収集から始まり、企業は業務記録、ライセンス、通関書類などを含む重要な情報を集めます。その後、このデータを見直し分析することで、企業が規制要件を遵守しているかを判断し、コンプライアンスが不十分な分野を特定します。

これらの結果と経営陣からの意見に基づき、包括的な監査報告書が完成します。強力なコンプライアンス文化を持つ企業では、これらの報告書およびすべての裏付けデータと文書が保管され、簡単にアクセスできるようになっています。

重要な意思決定ポイント、責任者、タイムスタンプなど、コンプライアンスプロセスを追跡し文書化する機能を備えた一元化されたコンプライアンスプラットフォームを確立することは、監査に備えて強固な防御を構築するために不可欠です。

説得力のある例として、社内コンプライアンスレビューのあと、多数の違反を積極的に開示した世界的な海運会社が関与した2020年のOFAC案件があります。この案件の結果は、OFACが考慮した極めて重要な緩和要因によって大きく左右されました。その緩和要因とは、明確かつ簡潔で、よく整理された提出書類を、裏付け資料とともに提出できたことです。これは、罰金を450万米ドルから112万5000米ドルに減額する上で決定的な役割を果たしました。

最終的には、ますます複雑化する規制環境の中で、業務効率の向上を達成するために優位な立場にあるのは、グローバルなコンプライアンス要件を自動化し、整合させることができる最新テクノロジーに投資する企業なのです。

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